CLANNAD

グラフィック
C+
シナリオ
D
文章
D+
操作性
B
サウンド
A
H度

総合評価
D

ByKEy

 さまざまな紆余曲折と長い沈黙を経て発売されたKEyの第三作「CLANNAD」
 世間では感動できると大評判の作品ですが、ンなもん私の知ったこっちゃありません。なので、以後感動した人には水をさす内容になっているのでご了承の程を。
 絵に関しては「もう好きにしたらいい……」と言うのが正直な感想です。特に最初のCGはインパクトがありました。人物と背景のギャップがあまりに酷くて。このCGが出ている時のヒロインの台詞に「でも、なにもかも……変わらずにはいられないです」というのがありますが、KEyの絵の異質さは変わらずにいる数少ないものの一つだと思います。まあ、制作期間が長かった為か作中で絵が変わっていたりはしましたが。
 システムはやっと読み返し機能が付いた事で人並みになったという印象。ただ、分岐が細かいのにセーブデータには日付やヒロイン名など少ない情報しか表示されないのはかなり不便でした。
 サウンドは相変わらず優秀です。今までと同系統の曲ばかりで単調な印象ですが、それぞれの質は高く、高値安定といったところ。

 で、肝心のシナリオですが、三人ほどクリアしたところで唖然としたのを覚えています。馬鹿みたいに先が読みやすいのです。露骨過ぎる伏線が多く、KEyの考える「感動」というものがワンパターンであるため、シナリオも中盤にさしあたれば大体のオチがわかります。それはひどく予定調和的と言え感動に水をさすものでした。
 全体的に月並みで、「どこかで聞いた事のある話」がやたら多いというのが一番の印象でした。
 文章自体は作品のテーマである「家族愛」とか「町の想い」などという物を露骨に表そうとしていて、そのせいで特に後半酷く澱んだ文章になってしまっているのが特徴。教訓を詰め込みすぎた絵本みたいです。
 また、今作の特徴の一つにギャグがふんだんに盛り込まれている点があります。ギャグの質自体は今までと変わらない、アメリカのホームドラマに登場するようなものですが、量が今までとは桁違いです。読み解くのに知性や教養、雑学を必要としないギャグが大勢を占め万人向けですが、その分底の浅さは否めません。この辺は諸刃の剣ですが。
 シナリオといいギャグといい基本的には低年齢、若しくはピュアな人向けの作品です。無駄な知識が増えれば増えるほど楽しめなくなる作品です。

 非常というか異常に評価の高い作品ですが、その評価の根底には一種ブランド信仰に似たものがあるように感じられます。「KEyだから面白い筈だ!」という。ある意味宗教的でさえあります。
 なので冷静に考えて、KEy信者以外にはお勧め出来ません。

蛇足

 雑誌のインタビュー記事を読んでいて唖然としました。CLANNADが開発当初から発売にいたるまでで変更された点はありますか?という質問に対する企画・シナリオ担当麻枝准の台詞
「大きな部分は当初の予定のままです」
……ようするに発売寸前まで18禁か否かを隠していたのは計画的犯行だったわけですね?
 こういう姑息で卑怯な嫌らしい手段は嫌いじゃないんですが、お前らがやるなと言いたいです。吹けば飛ぶような弱小ブランドならともかく、すでに確固たる地位を築いていた業界の横綱と言えるブランドだったんですからね。巨人の四番がスクイズやるようなものです。
 ゲームの内容と製作者は切り離して考えるべきかもしれませんが、やっぱり私も人間ですから、そう簡単に出来る訳でもありません。というかむしろ重視します。ねこねこソフトとか、ゲーム自体は大した事無いけど作り手が好感持てるから買い続けていたりしますしね。
 何が言いたいかというと、製作者の悪評のせいで私的には作品の評価まで下がってしまったということです。先に挙げた部分の他にも、戯言等で書いたように、「CLANNAD」という名前をパクっといてそれを我が物のように大々的に宣伝する厚顔無恥さ。OHPに見られるおよそ客商売とは思えない尊大さは、やはりゲームをプレイする上でどこか頭に引っかかっていました。
 まあそれだけ、数多くのユーザーに支持されているという自負があるんでしょうね。それあっての全年齢作品発売でしょうし。
取り敢えず1ユーザーとしては、KEyがイカロスと化して翼をもがれない様に祈るばかりです。

 しかし……。この事といい、脊椎反射のようなギャグといい、人を殺す事によって感動を抽出するシナリオといい、つくづく下品な会社だと思います(汗)



 以下ネタばれ

 一つ気になったんですが、杏シナリオの双子チェンジ。あれ、笑うところですよね?(ほかにどう反応しろと?)
 それはともかく。感動するしないとは別次元の問題で、非常につまらない作品でした。
 ゲームである以上、そこには何らかの「楽しみ」が付随されているはずです。アクションなら敵を倒す事に爽快さを感じるでしょうし、RPGなら物語を進めキャラクターを成長させていく楽しみがあります。ギャルゲーならキャラクター達に対する愛着が発生するでしょうし、ネットゲームならさらに同じ趣味を持つ他人との交流という楽しさがあります。
 で、これら全てに該当しないCLANNADの楽しさってなんでしょうか?
 さらには今回、全年齢ということでエロという要素をも排除した訳ですが、それに代わる要素が一切追加されていません。
 今までと同じく声は入っていないし、攻略は馬鹿みたいに面倒。
グ ラフィックに関しては守備範囲が狭い上に数という点でも首を傾げざるを得ないものです。せめて足りない質を量で補ってもらいたかったのですが…

 また、学園編はともかく、アフターストーリーに行くとさらに露骨に感動させようとしていてうんざりでした。しかもずっと一本調子でシナリオにメリハリが無い為、退屈でしょうがなかったです。「朱」に匹敵します(汗)
 アフターストーリーに関しては他にも色々と突っ込みたい所はありますが、一番引っかかったのは主人公の親父殿に関するシナリオ。結構物語全体に深く影を落としている人なので、それなりに複雑な過去や葛藤があったりするのかと想像していたのですが…なんですかあのふざけたオチは!
 世の真面目に子育てしている親御さん方を馬鹿にしているとしか思えません。
 一番大切な人に死なれて、それでも頑張って息子を一人前に育て上げた時には何もかも使い切った後だった!?
 そんな理由を免罪符に息子に一生癒えない傷を与え、以後父親としての立場を放棄した事と、犯罪に手を染めた事をチャラにするみたいなシナリオ展開と文章にははっきりとした嫌悪感を抱きました。どんなに辛い出来事が身に降りかかろうとも、だからと言ってそれを理由に本人が堕落してもいい訳ではありません。大切な人の死は拳銃に指を掛ける出来事だったかも知れませんが、引き金を引くのはあくまで本人の意思です。
 フォローになっていないフォローを勝手に入れられることで、それまでの話がひどく陳腐な印象に成り下がってしまいました。
 最後に。シナリオわざわざ作るくらいなら野球のルールくらいしっかりと調べとけよ!と言いたいです。