D.C.

グラフィック
A
シナリオ
A−
文章
A
操作性
B+
サウンド
B
H度
C−
総合評価
A

ByCIRCUS

 前作『水夏』とはうって変わり現在のエロゲーの主体をなす『萌え』にひたすら重点をおいた作品。一年中桜の枯れない不思議な島『初音島』において主人公とヒロイン達が巻き起こすちょっと不思議な学園ものラブストーリー。
 
 とはいえ前作(水夏)であれだけ重厚なシナリオを書いたライターがただの学園ものに仕上げているはずも無く、深く読めば読むほどシナリオに隠された裏の顔が見えてきます。が、作品の本質はヒロイン重視の萌えゲー。ヒロイン達は義理の妹、幼馴染の女の子、学園のアイドルとどこにでもありそうな設定ですが、どのヒロインも魅力的に作られていて、どのヒロインにも魅力を感じないという事はほとんどありえないと思われます。つぼを押さえた展開に悶える事間違いありません。所々に小ネタも散りばめられていて笑いのつぼもおさえています。Hシーンが弱いもののシンプルな学園もの恋愛ゲームがしたい人にはこれほどお勧めの作品もありません。


 以下ネタばれ

 上にも書きましたがこの作品、読み進めていくと物語の裏の顔に気づきます。その筆頭がメインヒロイン音夢。
 義兄を六法全書で殴り起こすとはいえ(流すには酷すぎる気もしますが)本質的には主人公に尽くすいい女の音夢。主人公がほかのヒロインと結ばれたときには初音島から立ち去るなど至れり尽せり(?)の彼女、一歩間違えるととんでもない悪女なのです。
 音夢シナリオを進めていくと彼女が桜の花びらを吐き体調を崩していきます。これには作中には明確な説明が最後まで無く、全てをプレイし終わった人の中にはこのことに関して憤慨している人もいますが、これ音夢が自ら望んで起こしている現象なのです。
 この作品のヒロイン達はそれぞれが桜の力によって不可思議な現象の中にいます。子供のままの姿のさくら、人の心の読めることり、猫の体を借りて思い人のそばにある美咲、といった風にその現象はヒロインの望みに応えてさまざまな形を取っています。そして、音夢が桜の力を借りて望んだ姿、それが弱り行く自らの体なのです。
 それは音夢が体調を崩したタイミングに目を向ければおのずと理解できます。彼女が体調を崩すタイミング、それは主人公がさくらと接近した後にやってくるのです。要するに彼女は主人公と仲良くするさくらに嫉妬して(恐らく無意識に)主人公の目を自分に向けようと桜の力を借り体調を壊していたのです。
 無意識にやっているという点にそこはかとない恐ろしさを感じるのは私だけでしょうか(笑)
 やっている事だけを見れば彼女は悪女の類です。しかしそれをそれと見せない所が音夢の音夢たる所以です。
 このことが作中で触れられていないというのはつまり作品の登場人物がこのことに気づいていないことを意味しています。さくらなど、音夢が体調を崩したのは自分のせいだなどと誤解して慌てふためいています。ライバルとして主人公を取り合う二人ですが完全に音夢のほうが役者が上手だったという事です。
 稀代の悪女になる素質を内に秘めながら、あくまでも奥ゆかしい理想の恋人である音夢。そんな彼女にはほかのゲームのヒロインには決してありえない魅力を感じます。