グラフィック
C
シナリオ
B
文章
C
操作性
C−
サウンド
S
H度
D
総合評価
B
ByKEy
Kanonに続くKEyの第二作。AIRは前作よりさらに癖が強くなった、一種マニアックと言える作品に仕上がっています。
ストーリーは手を触れずに人形を動かす事の出来る不思議な力を持った少年が、ある海沿いの田舎町に辿り着いた所から始まります。で、そこでヒロイン達と出会うわけですが、彼女達の顔を見て思うわけです。「またこの絵かよ」と。
前作と変わらないその独特な絵は見るものに違和感を与えずにはいられません。むしろ背景とのギャップは前作より酷くなった印象もあります。
それ以外も長所・短所ともにほぼ前作を踏襲した物になっています。Hシーンは淡白な上に攻略キャラに比例して数が少なく非常にお粗末。システム的には読み返し機能が付いていないのが致命的でプレイする上で頗る不快です。一方、サウンドは前作より確実にパワーアップしており、BGMは耳に心地よく三つあるヴォーカル曲も優秀な出来です。
シナリオも多少(?)無駄が多い印象があるものの優秀と言っていい出来で、BGMと背景画が織り成すノスタルジックな雰囲気も個人的には非常に評価できます。
ただし、シナリオの癖は前作より強くなっているので注意が必要です。基本的にKEyはシナリオがワンパターンなので、Kanonが駄目だった人は恐らくAIRも駄目でしょう。逆に前作で感動した人はこちらも楽しめると思います。
KEyの作品をプレイした事の無い人は、AIRのストーリーは宮沢賢治やサン・テグジュペリに近いものだということを念頭に置いてプレイするかどうか考えるといいと思います。
間違っても世間で騒がれるほどには万人向けの作品ではありません。
以下ネタばれ
作品の形がホメロスのイリアスに似ていますね。長いストーリーの最後のクライマックスだけを取り出したという点で。
……どうでもいいことですね。
作品全体の感想としては、マニアックと言うかプロフェッショナルと言うか……普通の18禁ゲームを作る事を端から放棄している感じです。
一応三人の攻略キャラが存在しますが、物語の焦点は観鈴一人に定められていて、他の二人は一応物語の根幹に接点を持たせるように設定されていますが、明らかに付け焼刃の脇役です。
感動は出来るかも知れませんが、トゥルーエンドが非常に救われない結末なのはいただけません。つうか結局主人公は大した事なにもやってないし、物語的にもなんにも進展しなかったような気がするんですが……そのためストーリー的にはメビウスの輪の一部を抜き出したような印象です。
分岐は少なくプレイヤーの意思に左右される部分も極僅か。感動するかもしれないが酷く後味の悪いEND。こうして考えるとゲームとして成立しているのか甚だ疑問で、極論製作者の自慰行為とさえ換言出来ます。ゲームというものは普通なんらかの形で娯楽を提供するものですからね。
製作者にはなにか壮大かつ崇高な考えがあって、この作品を通して我々に伝えたいものがあったのかも知れませんが、取り敢えず私には判りませんでした。
小説としてなら優秀かも知れませんが、ゲームとしての評価は全く別物です。