朱

グラフィック
B−
シナリオ
B
文章
D
操作性
C+
サウンド
S
H度
B−
総合評価
B

Byねこねこソフト

 同社の作品『銀色』からの世界観を引き継ぎ、砂漠を舞台にしたオムニバス形式のファンタジー物語。
 この作品の特徴は大きく別けて二つ。
 ひとつはサウンドがすこぶる優秀である事。BGMは言うに及ばず、複数あるヴォーカル曲もそれぞれが水準を大きく上回るレベル。初回版にはヴォーカル曲を含んだサントラがついてきましたがこれだけで十分3000円の価値はあります。
 一方問題なのはその文章力。(別に朱に限らずねこねこソフトの作品はほとんどがそうですが)シナリオを物語の骨格だとしたら文書力の有無はその骨格に立派な肉付けが出来るかどうかに影響するとでも言えばいいのでしょうか。シナリオ自体には大きな破綻も無く特に問題無いのですが、そのシナリオの長大さに文章力がまったく追いついていません。
 読んでいて飽きしか感じさせない文章のため、長いシナリオの中間部分はとにかく弛みがち。このゲームを一気にやり終えるには相当の胆力が必要だと思われます。
 というわけで長い文章を読むのが苦手な人、テンポ良い話が好きな人、ついでにヌキゲーがしたい人にはお勧めできません。
 ただ、現在では値崩れを起こしていて場所によっては1000円前後で手に入ってしまうため、音楽を聴くためだけでも十分元は取れる気がします。

以下ネタばれ


 ねこねこソフトの作品全般にいえることですが、とにかく文章が増長!
 全てのシナリオに存在する砂漠を旅するシーンは特にその傾向が酷く、それまでの感動を遥か彼方に追い遣るほどの威力を秘めています。えんえんと変化の無い退屈な文章を読ませられるのは苦痛以外の何物でもなく、作品の質を大きく下げています。
 それから気になったのは人物の描き方。一例を上げればファウに看護を求めた町の人間達。それまで必死に助けを求めていたにも係わらず、治療が及ばず患者が死んだ途端に手のひらを返してファウの糾弾を開始する。このあたりの感覚は私を含めゲームをプレイする人の大部分を占めるであろう日本人には理解しがたいものがあります(中国人なら別でしょうが)

 そのほか主人公達の行動に関しても、選択肢一つ無くプレイヤー側が(恐らく)意図していたのとは別の行動を採っていくため歯がゆい思いをする事が多数あります。
 何故そのような行動をしなければならないのか?その理由付けが弱く、またそこに至るまでプレイヤーの意思が介入出来ない。その挙句がヒロインの死。これではたまったものではありません。
 フィクションとはいえ登場人物を殺すならそれなりの理由が欲しいところです。ただのシナリオの都合から、またはお涙頂戴のために。そんな理由で殺されていったキャラクター達には同情を禁じ得ません。