幻燐の姫将軍2

グラフィック
A+
シナリオ
D−
文章
C
操作性
C−
サウンド
C
H度
A
総合評価
C

Byエウシュリー

 人間と魔族の間に生まれた主人公が種族の壁を乗り越え、人間との共存を目指し戦いを繰り広げていく本格シュミレーションRPG。
 と、上は会社の作品紹介そのまんまみたいな文章で、ゲーム雑誌などにもこのような感じで紹介されていたのですが、はっきり言って自賛しすぎです。実際にはかなりスケールの小さい作品になっています。
 まずゲームの根幹を成す戦闘シーンですが、よく出来ているといってもそれはあくまで18禁ゲーム内でのお話。コンシューマとは操作性、ストーリー、グラフィック全て比べるべくもありませんし、むしろプレイを進めていくにつれてこの戦闘シーンが煩わしくなってきます。
 純粋にゲームとして楽しむには物足りない。しかしクリアしないとHシーンは拝めない。言うなれば、中途半端な本格志向が悪影響を及ぼしたとでも言うところでしょうか。目指すゲームにクリエイターの実力が追いついていないのです。むしろシンプルに作られたアリスソフトの作品群の方がHゲームとしての機能を過不足なく満たしている分優秀な作品と言えるでしょう。
 また、問題なのが作中の会話シーン。意図している訳ではなく確実にライターの実力不足から来るものでしょうが、とにかく会話がショボい。はっきり言って、「水戸黄門」に出てくる悪代官と越後屋のレベル。「主も悪よのう越後屋」「いえいえ、お代官様にはとてもとても」これと大差ない会話を、作中ではボスクラスのキャラクターが繰り広げるんだから白ける事この上無し。会話の所為で、やたら人間(それ以外も)の器が小さくなってます。
 主人公が極度のマザコンなのも大きな問題点。意図しているのかいないのか、そこかしこにマザコン少年の描写が見受けられます。はっきり言ってキモイ。しかもそれがストーリーの向上に一切関与していない。全く以て無駄な性格設定です。
 一方CGグラフィックに関しては優秀と言っていいレベル。Hシーンも多いのですが、そこにたどり着くまでが面倒くさい。せめて二週目からの戦闘カットが欲しかった所。
 また善悪二元論が色濃いためストーリーは非常に単純、かつ対象年齢の低い物になっています。ガンダムを見てジオン軍に魅力を感じた人はプレイしないのが賢明だと思われます。
 総評としてHシーンを見る為には、手間を惜しまない人と、時間が有り余って暇つぶしにやろうという以外お勧め出来ません。

 以下ネタ


ばれこの作品とにかくストーリーが幼稚。これに尽きます。
 このゲームにはロウとカオスという概念が出てきますが、ストーリーが幼稚なのはこの部分に最も色濃く表れています。
 知っている人も居るかもしれませんが、コンシューマの「オウガ」シリーズに同じ名称の概念が出て来ました。
 プレイヤーの選択肢によって、主人公がロウかカオス、もしくは中間のニュートラルという具合に、どのような属性なのか決められるといったものです。で、ここで重要なのはカオス=悪・ロウ=善と単純に色分けされない点です。
 シリーズの中の「タクティクスオウガ」を例に取ってみましょう。シリーズ中盤、民族独立戦争の火中にいた主人公は一つの選択を迫られます。(そしてここがロウとカオスの分岐点になります)
 主人公のその時の目的は敵対する民族に押さえ付けられていた同胞を解放し、彼らを蜂起させる事でした。しかし、戦いに疲れた同胞は決して武器を手に取ろうとしません。そこで主人公達解放軍のリーダーは一計を案じます。戦力として使えないなら、彼らを民族蜂起の梃子にしてしまおうと。
 つまり、彼らを虐殺し、それを敵方の仕業に見せ付ける事によって、民族全体に殺らなければ殺られるという恐怖心を植え付け、民族の結束を固めようとしたのです。
 ここで主人公に選択が迫られます。大義の為に虐殺に加担すべきか?先の事を考えずにそれを阻止すべきか?
 これは非常に難しい問題です。確かに虐殺は人道に外れた行為です。しかしそうしなければ、彼らは敗れ、民族の同胞がさらにひどい扱いを受けるのは目に見えています。今殺そうとしているよりも多い人間が殺されるでしょう。
 この状況で、どちらが絶対の正義だなどと簡単に答えを出せよう筈もありません。それ故に善と悪では無く、ロウ(秩序)とカオス(自由)なのです。
 が、そんな複雑な思考などこのゲームには一切ありません。ロウだカオスだ使ってるのが腹立たしくなるくらいに。
 このゲーム、単純に人を殺せばカオスで人を助ければロウです。(きっとシナリオライターは「人が死ぬから」という理由で戦争反対を唱えている人間の類です)なので「明らかにそれは逆だろ?」と突っ込みたくなる箇所が多数あります。確実に、響きが格好いいと言う理由だけでわざわざロウとカオスと言う言葉を使っています。
 もしどうしてもロウとカオスを使うのなら、二つを逆にしてたらしっくり来たかもしれませんが。主人公(シナリオライター)は勘違いしてますが彼の行動はカオスそのものですからね。
 エウシェリーの作品はシナリオライターが変わる(もしくは自分の実力に気付く)まで手を出さないのが賢明に思えます。グラフィックが優れているので非常に勿体ないですが……