銀色完全版

グラフィック
B
シナリオ
B
文章
D
操作性
C
サウンド
B−
H度
C+
総合評価
C

Byねこねこソフト

 全体に暗い雰囲気が漂う、時代を超えて存在していた「銀糸」に纏わる物語を過去から現代へと順番にオムニバス形式に纏めた作品。

 今では「朱」に登場していたあの「銀糸」だと言った方が通りがいいかもしれません。
 世界観的に両作品は「銀糸」というキーアイテムで繋がっています。「朱」をプレイするならこちらを先にプレイしたほうがいいでしょう(いまさらですが……)

 同じようにオムニバス形式で暗い空気が漂っていた「水夏」のテーマが「死」だとするとこちらは「不幸」か「狂気」がそれに当てはまるでしょう。(テーマが似通ってしまった分、水夏の劣化コピーといった印象を受けますが。)内容的には鬱ゲーといって差し支えありません。楽しくゲームをプレイしたい人には絶対にお勧めできません。
 ねこねこの例に漏れず文章は退屈で弛み勝ち。世界観は大雑把で適当。また、登場人物の行動がシナリオ展開のために強引に動かされていた印象があり、読んでいる上で非常に違和感が残る作品でした。
 とにかく後味の悪い作品なのでプレイする際はその辺を覚悟しておきましょう。


 以下ネタばれ

 登場人物が強引に動かされていると書きましたが、その筆頭は第二章でしょう。貴族の子息なら鶴の一声で村人などどうにでも出来る筈なのに、彼は最後までそれをしない。
 少なくとも村人に謀られていた事を知った後ではそれを自制する必要は一切ない筈なのに、です。明らかにヒロインを殺すための措置だったと思われます。

 また、現代編の精神科医に関しては、もはや強引通り越して詐欺です。
 少しでも心理学を齧った事のある人ならわかると思いますが、実際の精神科医があのようにクライアントの私生活に図々しく口出しするなど絶対にありえません。
 精神科医は診療の時間以外は極力クライアントには関わらないのがセオリーなのに、その私生活、あまつさえ人間関係に口を挟むなど言語道断です。
 あれを読んだとき私は、はっきりと感じました。

「これを書いた奴は、プレイヤーが心理学の知識などないと思って馬鹿にしている」

と。
 シナリオの都合のために事実を捻じ曲げるなど、プロとしてやってはいけないことでしょう。
 推理小説で「犯人は実は宇宙人で密室からワープ出来た」などと言うのと同じことです。手抜き以外の何物でもありません。(同じことはやたらヒロインを殺していた点にも言えます)
「水夏」と同じオムニバス形式で同じような重いテーマを持った作品ですが、こちらのほうがかなり質は下がります。

 安易に感動を呼ぶためにヒロインを殺し、シナリオの手間を省くために事実を捻じ曲げる。
 もう少し自分たちの作った作品・キャラクターに愛着を持って欲しい所です。