君が望む永遠

グラフィック
C+
シナリオ
C+
文章
C+
操作性
C
サウンド
C
H度
B−
総合評価
C

Byアージュ

 巷で大反響を呼んだ、アージュ製作の限りなくゲーム的要素を排除したシナリオ主体の作品です。上を見れば分かるように私はこのゲームにさして高い評価をしていません。なのでこのゲームに高い評価をしている人は(特にネタばれは)読まないほうがいいかもしれません。
 物語の構成としては大きく二部に分かれています。ゲームというよりまんまノベルの第一章。そして一章から三年後の世界を描いた第二章です。
 第一章は何処にでもある普通の恋愛ゲームと同じような展開で進んでいきますがラストでその光景は180度反転します。そしてそのラストから一気に三年後の第二章へと飛ぶわけですが、この空白の三年間が曲者。ゲームの中のキャラクターは当然、その三年間に蓄えたさまざまな想いを第二章でぶつけてくるのですがゲームをプレイする側にとって、そんな事知ったこっちゃ有りません。なので主人公とプレイヤーの意思に大きな乖離が生まれてしまうのです。そのため主人公は、世間でやれヘたれだ、優柔不断だと酷評されています(全くその通りなんですが)18禁ゲームとしては萌えなどの要素が弱く、キャラクター造形も特に魅力的とはいえません。CGとサウンドは並程度ですがOPソングに関しては歌詞がかなりしょぼいのが欠点。Hシーンもそんなに魅力的ではなく、シナリオを除けば平凡なゲームです。なのでシナリオの好き嫌いでこのゲームの評価は九割がた決まってしまうと思われます。欝ゲーが好きな人はやってみるのもいいかも知れません。

以下ネタばれ


 18禁ゲームとしてはシナリオ以外平凡と書きましたが、じゃあ例えば小説としてこの作品を捕らえたらどうか?ということになります。
 第一章の終わりでヒロインが交通事故に遭うのは確かに衝撃的でしたが、あくまでそれは18禁ゲームとしての話。ドラマや小説の中では特に変わった展開ではありません。
 そして第二章に関して。とにかく大きいのが巷での主人公に対する「ヘたれ」という声。不特定多数の女性を前に誰に決めるわけでもなく、かといって素直に二股かけるでもなくの態度は確かにストレスたまります。
 そもそもヒロインの片割れである水月への主人公の執着が理解できません。
 彼女は主人公が遥の事故によってボロボロの精神状態になっていた時に主人公を支えたとなっていますが、そのあたりの描写が弱いため、何かにつけて水月のことを気にする主人公は鎖に繋がれた犬のようにさえ思えてきます。
 遥が第一章において主人公との拙い恋を紡いでいくのに対し、水月の場合、二人が愛し合っているという感じをほとんど受けないため、まるで間隙に付け込んだ泥棒猫のような印象です。もともと、片思いの相手が精神的に参っている時に優しくするなどと、もっとも原始的な方法で主人公の横にちゃっかり居座っているのですから。
 大きな貸しを作ってしまった主人公がその利子を返すために付き合っている。水月との恋愛を私はそう見ています。(これではとても恋愛などと言えるものではないですが・・・)
 そんなわけでその水月の想い(妄執?)が完膚なきまでに打ち砕かれる大空寺シナリオが私の一押しです。

ところで、某サイトでの感想には

「主人公の三年間の苦悩を理解できないプレイヤーがお粗末だ」

 などとの書き込みがありましたが、とんでもない話です。我々ユーザーはあくまでもお客様です。その我々に理解出来ないと言うことは販売者側の怠慢、もしくは力不足と言わざるを得ず、著しく独りよがりだと言わざるをえません。
 製作者の中で完結してしまっている作品。それが「君が望む永遠」です