それは舞い散る桜のように

グラフィック
A
シナリオ
B+
文章
S
操作性
B
サウンド
S
H度
B−
総合評価
S

ByBasiL

 進学を機に北海道(静内?)から何かに導かれるように一人桜坂市へと引っ越してきた主人公。彼が桜坂で迎えた二度目の春から物語はスタートしていきます。
 最初はシンプルな学園ものとして進行していきますが、特筆すべきはその軽妙な文章。テンポよく、ギャグを散りばめながら進められていく会話シーンは読む者に飽きを感じさせません。また名言の多さではこの作品の右に出るものは無いと思います。

「明日に延ばせることを今日するな」

「嘘も通せば現実風味」

 等々、私の心に強く刻まれました(笑)
 サウンド・グラフィック共に優秀で長いシナリオの割に退屈することも無いでしょう。ただし原画に関してはデッサンの狂いが目立ちます。
 また登場人物が非常に魅力的なのも特徴です。五人のヒロインは言うに及ばず、主人公の親友、学校の担任、佐伯家の人々など、サブキャラクター達が非常にいい味を出しています。その為もあって物語の大筋とは関係ないサブシナリオが大変面白い物に仕上がっています。むしろメインシナリオよりこちらの方が重要かも知れません

 「大人の事情」というやつで製作にごたつきがあった所為もありメインシナリオは謎が多く(というか未完成)、多少強引な展開もありますが、全体としてみれば非常に優秀な作品です。是非一度やってみて下さい。


 以下ネタばれ

 問題点があるとすればやはりシナリオでしょう。人と愛しあうと、相手の自分に関する記憶が消えてしまうという特殊体質(?)の主人公。
一応桜の精という形で説明出来るのですが今一理解しにくい上、全てのルートでこの設定が使われるため、後半部分全ヒロインのシナリオが似たような形になってしまっています。一人クリアすると他のヒロインの展開も大体わかってしまうのです。

 もっとも、その点を引いたとしても十分に優秀なシナリオですし、何よりそれ以外の部分が非常に素晴らしいので、作品としての評価はかなり高いものになります。
 美麗なグラフィックに心地よいサウンド。テンポのいい文章に魅力的なキャラクター。やってみて損はありません。
 しかし、蝋燭は消える瞬間最も強く輝くというのは本当ですね。
 恐らくはBasiLの絶作であろうこの作品。今までのBasiL作品の最高傑作である事は確実です。
 ……単にシナリオライターが変わっただけですが(笑)