水夏

グラフィック
B+
シナリオ
S
文章
A+
操作性
B+
サウンド
A
H度
B−
総合評価
S

ByCIRCUS

 死神の少女が訪れた田舎町「常盤村」を舞台に全四章で構成された、オムニバス形式のノベルゲーム。全編に漂う「死」の匂いが特徴です。
 シナリオだけ見たら、とてもPC18禁ゲームとは思えない特異な作品。それゆえにHシーンはやや手薄でそれが主目的の人にはお勧めできません。とはいえキャラクター自体は十分に魅力的です。(名無しLOVE!)萌えゲーと勘違いして買うと痛い目見ますが(笑)
 このゲームはサスペンス物の小説を読むのと同じように楽しむのがいいと思います。
 重厚に織られたシナリオを楽しみ、その先を予測していく。文章力は優秀なのであまり飽きを感じることも無いでしょう。小説を読むのは辛い、という人はこの作品を手がかりにしてみては如何でしょう?
 また随所に心理学のテキストに出てくるような展開が待っているのも特徴。心理描写に注目して読み進めるのもいいかも知れません。
管理人が今まで出会った中で最高の作品です。


 以下ネタばれ

 とにかく一般の18禁ゲームとは空気がかけ離れています。怖いし、血なまぐさいし、やたら人は死ぬし。特に女の妄執を教えてくれる第三章は全てを理解し終わったときゾッとします。(やってること自体はD.C.の音夢と大差ないんですが……)
 また、ほとんどのキャラが死と直面しているのでプレイしているほうは気が気ではありません。自分の好みのキャラが何時死ぬか分かったモンじゃないんですから(汗)
 しかしその「死」というファクターをライターは実に巧く使いきっています。
 もしやという気配を漂わせ結局最後にメインヒロインが死んでしまう(?)第一章。一章以上にヒロインの死を予感させながら結局生き延びる第二章。打って変わって前半は死の匂いを消しながら最後で一気にその鎌口をもたげる第三章。キーパーソンの死神「名無しの少女」を中心に全てが集約していく第四章。それぞれのシナリオが単体で成立するんじゃないかと思える重厚なシナリオは実に効果的に、しかし決して意味の無い死を描く事なく物語は進みます。
 プレイする人は選びますが間違いなくお勧めの一品です。時間がある方はぜひやってみてください。